alacantonade

精神分析と映画をめぐる読書案内

2014-01-01から1年間の記事一覧

セルジュ・ダネーの『リオ・ブラボー』論:ダネー著作集を読む

*Serge Daney : Un art adulte, in La maison cinéma et le monde, tome 1. Le temps des Cahiers, 1962-1981. (P.O.L., 2001) すでに全三巻が完結し、ときどき引っ張り出しては拾い読みしていた分厚い著作集。わざわざ年代順に並べてくれているのだから、…

カトリーヌ・マラブーのフロイト論

*Catherine MALABOU : Les Nouveaux blessés, De Freud à la neurologie, penser les traumatismes contemporains (Bayard, 2007) 『新しい負傷者たち(傷を負った新たなものたち?)』は、可塑性の概念をめぐる思索の書であり、トラウマというアクチュアル…

ジョルジュ・ディディ=ユベルマンのサミュエル・フラー論

*Georges Didi-Huberman : Remontages du temps subi, L’œil de l’histoire, 2 (Editions de Minuit, 2010) サミュエル・フラーは米軍第一歩兵師団(Big Red One)第16連隊の一兵士として、終戦とほぼ同時にファルケナウの強制収容所に踏み込む。そこで想像…

ロジェ・タイユールのハンフリー・ボガート論

* Roger Tailleur, Viv(r)e le cinéma (Actes Sud/Institut Lumière, 1997) ロジェ・タイユールの Humphry Bogart, de solitude et de nuit と題されたテクストより。初出は1967年。 若きロジェ・タイユールがアメリカを発見したのは、ポケット辞書を片手に…

セルジュ・ダネーのサミュエル・フラー論

*Serge Daney : La rampe (Cahiers du cinéma, 1983) D-Day 70周年。だからというわけではないが、ひさしぶりにダネーの『最前線物語』評を読んでみた。初出は Cahiers du cinéma 1980年5月号で、’’Fureur du récit’’(物語への熱狂/物語の怒り)というタ…

ミシェル・クルノのゴダール論

*Michel Cournot : Au cinéma (Melville, 2003) クルノには『気狂いピエロ』についてのテクストが二つあるが、そのうちのひとつ。以下は評論集『映画館にて』の巻末に収録されているもの。 もう夜か、鎧戸は下ろしたか、やみのうえに青で母音をいくつか書け…

二つのジェリー・ルイス論(その2):ミシェル・クルノの映画批評

*Michel Cournot : Au cinéma (Melville, 2003) 映画批評の無頼派詩人ミシェル・クルノ(1922-2007)のグラフィック・アートをおもわせるスタイルの文章を、アントワーヌ・ドゥ・ベックは critique-transe と形容している(Dictionnaire de la pensée du ci…

二つのジェリー・ルイス論(その1):ジャン=ルイ・ボリの批評

*Jean-Louis Bory : Des yeux pour voir(10/18, 1971) ジャン=ルイ・ボリ(1919-1979)は、フランスでもっともリスペクトされていた批評家のひとりであろう。ゴンクール賞を受賞した小説家であり、パリの名門リセ、アンリ四世校の文学教授(専門はバルザ…

ゴダールが絶賛したロジェ・タイユールの『動く標的』論:新・映画批評家列伝(1)

Roger Tailleur : Viv(r)e le cinéma (Actes Sud / Institut Lumière, 1997) フランスでジャン・ドゥーシェのロング・インタヴューが刊行されたのを機に、かの地のシネフィル文化について再考してみようとおもいたった。さて…… シネフィルとはひとつの歴史的…