alacantonade

精神分析と映画をめぐる読書案内

2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

セルジュ・ダネーのフィリップ・ガレル論

*Serge Daney : Ciné journal, 1986, Cahiers du cinéma. セルジュ・ダネーは傷だらけの批評家である。彼が批評家として活動していた時代は、映画がかつてなく不毛な時代であった。それ以前に、彼の世代そのものが深い政治的な挫折を味わっていた。さらに不…

マリ=ジョゼ・モンザンの映画論

*Marie-José Mondzain : Images (à suivre), Bayard, 2011. モンザンはフランスの哲学者。10世紀の偶像破壊運動に対抗して書かれたニケフォロス2世の神学的文書の翻訳と註釈により注目を集め、この時代の偶像破壊論争への深い知見を武器に、よりアクチュア…

オーティス・ファーガソンのヒッチコック論

*Otis Ferguson, Hitchcock in Hollywood, in The Film Criticism of Otis Ferguson, Temple University Press, 1971. オーティス・ファーガソンは、1934年から42年まで The New Republic で時評欄を担当していた映画批評家(43年戦死)。 アメリカ最初の「…

Time のジェームズ・エイジー

* James Agee, Film Writing and Selected Journalism, The Library of America, 2005. ついにジェームズ・エイジーを語るときがきたようだ。 ピューリッツァー賞を受けた小説家であり、詩人、ジャーナリスト、脚本家、そして映画批評家。『アフリカの女王…

ロバート・ウォーショーの「映画の年代記:西部の人」

*Robert Warshow : Movie Chronicle : The Westerner, in The Immedi-ate Experience, Harvard University Press, 2001. ウォーショーの西部劇論。「悲劇的英雄としてのギャングスター」と並ぶ名篇として知られる。 発表されたのは、1954年。ペキンパーや「…

ロバート・ウォーショーの「悲劇的英雄としてのギャングスター」

* Robert Warshow : The Gangster as Tragic Hero, in The Immediate Experience, Harvard University Press, 2001. ロバート・ウォーショー(1917-55)は、Commentary、The Partisan Review などに寄稿していたエッセイスト、批評家。 その主な文章は、論…

マニー・ファーバーのゴダール論:マニー・ファーバーの批評(6)

* Jean-Luc Godard, in Farber on Film, 2009, The Library of America サミュエル・フラー論の前年にあたる1968年に、同じく Artforum に発表されたゴダール論は、質量ともに充実の論考。 このあと、70年に入ってからのファーバーは、主としてパートナーの…

マニー・ファーバーのサミュエル・フラー論——マニー・ファーバーの批評(5)

* Samuel Fuller, in Farber on Film, 2009, The Library of America. マニー・ファーバーの名文より。 今回はサミュエル・フラー論をよもう。 チェスター・グールドほどのスタミナも影響力もなく、ファッツ・ウォーラーのように無限にクリエイティブでもな…

セルジュ・ダネーのテニス論——ダネーのテレビ論(3)

* Le Salaire du zappeur, P.O.L, 1993. ダネーのテレビ論をもう一席。 ときあたかもテニスシーズンまっ盛り。それにちなんだお題をひとつ。 セルジュ・ダネーはリベラシオン紙上でテニス評を書いていたほどのテニスマニアだった。 ローラン・ギャロスのシ…

ラカンの『愛のコリーダ』論

*Jacques Lacan : Le Séminaire, livre XXIII, Le sinthome, Seuil, 2005. 『サントーム』は晩年のラカンの重要な講義録のひとつ。最近出た『精神分析の名著』(中公新書)に選出された21篇のなかにも、『エクリ』とならんで(なぜか?)ランクインしていた…